…確かに、それは去年の自由課題で、先輩を想って書いた作品だ。
ずっとずっと、先輩が好きだった。
1年生の時からずっと。
だけど、勇気が出なくて。
地味な私だけど、せめて字だけは女らしさを出したくて。
儚げな、仮名作品にしたのだ。
…先輩が目に留めてくれていたなんて、思ってもみなかった。
「あれは…。」
まさか先輩のことを想って書きました、なんて言えなくて、私は言葉に詰まってしまった。
「…なんてな、そりゃ青春の女子高生だもんな、恋愛ぐらいするよなあ。」
戸惑う私に知ってか知らずか、先輩は気まずくなった空気を吹っ切るようにそう言って笑った。
先輩、先輩、先輩。
貴方なんです。
私が好きなのは。
陽介先輩、貴方なの。
気持ちが溢れてしまいそうだった。
怖くて踏み出せなかった。
今も、不安で仕方ない。
大学に、素敵な人は居るの?
いつも話す美味しいと評判の学食。
いつも一緒にお昼ごはんを食べているのは誰?
先輩の、とてもよく似合っている栗色の毛に触れる人はいるの?
先輩の、筆を握っていたその手を今握っているのは、誰なんだろう。
少し先の、私には想像のつかない世界にいる先輩。
だからこそ、2年前よりもっともっと、気持ちを伝えることが怖かった。
…だけど。

