「俺さ、彼女できたんだよね。」
幼馴染みである古川 凌の一言に私。
向坂 真尋の動きが止まる。
え?凌に彼女?
「あれ?今日エイプリルフールだっけ?」
エイプリルフールはついこの前終わったはずだ。
「嘘じゃねぇから。同じクラスの春崎 麻宏っているだろ?その子。」
私と同じ名前のマヒロ。
その子のことが気になっているというのは聞いて居たけど、まさか付き合うなんて思ってもいなかった。
「そりゃ良かったね」
「喜んでくれるのか?」
『もちろんでしょ?』そういうと同時に少し微笑んだ。
本当は応援なんてしたくもないのに自分に嘘をついて手を握りしめる。
「お前が親友で良かったよ」
元気にそう言うと、悪びれもなくニコニコと笑いかける凌。
「はいはい。
もう遅いから私は寝るよ!」
「今日は夜更かししねぇのな!
おやすみ!」
私は頷くと窓を閉めカーテンを閉じた。
凌の家とは隣同士だ。ちょうど私の自室の窓と凌の自室の窓が向かい合わせになっていて、時々夜に話したりしている。
「『親友で良かったよ』……か…。」
私の小さな呟きは、誰にも聞かれる事もなく静かに消えていった。