これを愛と呼ばぬなら

 鷲尾さんに促され、営業二課のスペースを出る。隣接されたミーティングルームへ入ると、私と鷲尾さんは、向かい合って席についた。

「潮月さん、うちの高橋が怖い思いをさせて本当にごめんなさい」

「そんな、頭を上げてください」

 深々と頭を下げる鷲尾さんに、慌てて両手を振る。鷲尾さんは顔を上げると、私を見て申し訳なさそうに眉根を下げた。

「高橋が潮月さんにしつこくしてるって、社内でも噂になってたみたいなのに。私ったら把握してなくて。上司として監督不行き届きだったわ。申し訳ない」

「あの、私ならもう大丈夫なので。私の方こそ、昨日は助けてくださってありがとうございました。医務室まで連れて行ってくださったのも、鷲尾さんなんですよね? お体大事にしないといけない時期なのに、無理をさせてしまって……」

「え?」

 鷲尾さんが、驚いて目を丸くする。一目見て間違いないと思ったのだけれど、私の勘違いだったのだろうか。

「どうしてわかったの? 私が妊娠してるってこと……」