「明日、神条に別れようって言うから」

ハルトの部屋のベッドの上であたしのことを抱きしめたハルトは意を決したようにそう告げた。

「そうだね。そろそろ……伝えた方がいいかもしれないね」

ハルトとセイラは同じ教室内にいるのに、目すら合わせなくなった。

といっても、ハルトがセイラを避けているだけ。

セイラはどうにかしてハルトとの距離を詰めようと頑張っていたものの、何の変化もなかった。

頑張っても頑張っても報われない惨めな姿のセイラを見て同情よりも喜びが勝った。

どう?今まで生きてきた中で初めてでしょう?

こんなに自分を惨めに思うのは。

でもね、これで終わりだなんて思わないで。

今度はあたしがセイラに味合わせてあげる。

好きな人を親友に奪略されたという絶望を。

あたしがセイラにされたことをし返してやる。

ベッドの枕元でハルトのスマホが震えている。

「電話?」

「あぁ。神条かもしれない」

「――ダメ!」

スマホに手を伸ばしたハルトを制止する。

「ねぇ、ハルト。ずっとあたしのことだけを見ていてね?」

上目遣いでハルトを見上げるあたしの頭をポンポンっと叩くハルト。

「当たり前だろ」

ハルトがそう答えた時、枕元のスマホの振動がピタリと止まった。

スマホを耳に当ててハルトが出るのを今か今かと待っているセイラの姿を想像すると顔がにやけてしまいそうだった。