「清水君……他に好きな人がいるのかな……」

ポツリと呟いたセイラの目から一筋の涙がこぼれた。

透明であまりにも綺麗なその涙。もしあたしが今泣いたらどんな色の涙が流れるんだろう。

「セイラ……泣かないでよ……?ねっ?」

「ごめんね、真子。私……苦しいの………私、どうしたらいいんだろう……」

セイラの精神状態は極限に達しているようだった。

セイラも苦しいんだね。でも、あたしだって一緒。

ハルトをセイラにとられて苦しい思いをしたんだから。

セイラだってあたしを傷つけたんだから。

だけど、心配しないでよ、セイラ。

もうすぐハルトがセイラに別れを告げるはずだから。

そうすればもう楽になれるよ。

だから、それまでもう少しだけ我慢してね。

あたしは俯いて泣くセイラの背中をさすって励ます。

視線をスライドさせると、黒板の前にいたハルトと目があった。

ほんの少しだけ微笑むと、ハルトは小さくうなづいて照れたように顔を背ける。

ハルトってば照れちゃって可愛い。

ほんの一瞬の間に、あたしとハルトの心が通じ合った気がする。

ああ、やっぱり気持ちいい。

自分でもどうしてこんな気持ちになるのかわからない。

でも、一つだけ確かなことがある。

セイラが泣いている姿を見ると、心がスカッと晴れる。

「大丈夫、大丈夫だから」

セイラを励ましている自分に酔うと同時に、ものすごい爽快感が全身を駆け巡った。