ハルトはあたしの言ったとおりに動いてくれた。

教室内ではできるだけセイラを避け、遊びに誘われても断り続けている。

セイラは日に日に元気を失っていき、暗い表情でいることが増えた。

夜、寝つきがわるくなったらしい。

悪い夢をみるようになり、寝不足がたたって昼間も頭痛がすると度々口にした。

放課後一緒にいてもスマホばかり気にしている。

ハルトからの連絡を待っているのは一目瞭然だった。

「清水君……全然連絡くれなくなっちゃった」

休み時間、あたしの席にやってきたセイラは盛大な溜息をついた。

「そうなの……?」

「うん。私ね、この間意を決して『ハルト君』って呼んでみたの。だけど、清水君何の反応も示さなかったの。それどころか……少し顔を強張らせてた」

「顔を強張らせるって、まさかそんな」

呆れたように笑いながら否定する。

全部想定範囲内だ。

あたしと関係を持ったハルトはセイラに対して罪悪感を抱いているのは間違いなかった。

中学時代、彼女に浮気をされて苦しんだハルトはセイラを昔の自分に重ね合わせているに違いない。

バレて傷付けてしまう前に一刻も早くセイラに別れを告げたいと思っているハルトは違う意味でセイラを傷付けてしまっていることに気が付いていない。