でも。まだだ。まだ全然足りない。

この気持ちをしばらく味わっていたい。

そのためにはこの三角関係を続けていく必要がある。

「明日、別れようって神条に伝えるから」

ハルトの言葉に首を横に振る。

「ダメだよ。まだ伝えちゃダメ」

「なんで?早く言わないと神条にだって悪いだろ?」

「突然何の前触れもなく別れようなんて言ったら、セイラがショックを受けるに決まってる。セイラは繊細な子だもん。だから、少しづつそういう兆候を見せていった方がいいよ」

「兆候……?」

「そう。他の人が好きなのかもしれないって思わせるの」

「でも……」

「セイラはあたしの大切な親友だよ?できるだけ傷つけたくないの。時間がかかってでも、綺麗に別れてほしい。それに、そうしないとあたしとハルトが付き合えないでしょ?」

「真子は優しいな……?分かった……。真子の言う通りにする」

「ありがとう、ハルト」

これでいい。しばらくはこの背徳感に浸っていられる。

あたしはハルトの腕にぎゅっとしがみつき、クスっと笑った。