「そんなことはないよ」

「ううん、みんなそう思ってる。全部知ってるの。『人の男に手を出す最低女』っていわれてたことも。男の子の方から寄ってくるのにね」

一点を見つめたまま無表情でそう言ったセイラ。

「せ、セイラ……?」

いつもと雰囲気の違うセイラ。

「……昔から友達ってできたためしがないの。人見知りで口下手な自分が悪いって分かっててもちょっぴり悲しかった」

「うん……」

「でも、今は真子っていう親友ができたから幸せだよ。仲良くしてくれてありがとう」

照れるわけでもなくそれが当たり前のようにはっきりとした口調で言うセイラの目を見れない。


セイラはあたしを親友って思ってくれているみたいだけど、あたしは親友であるセイラを裏切っている。

ハルトとセイラを天秤にかけたあたしはハルトを選んだ。

そして何より自分の幸せを一番に願い、叶えた。

「あっ」

すると突然、セイラが立ち止まってポケットの中からスマホを取り出した。

「メール?」

「うん。清水君から」

セイラの顔が明るくなる。でも、あたしは知っていた。

この後セイラの表情が曇るのを。

「ハルトなんだって?」

「来週遊ぶ約束してたんだけど、忙しくて無理みたい」

「そっか……。残念だったね」

ごめんね、セイラ。来週、あたしが遊ぶの。ハルトと。ハルトの家に行くの。