「無理だ。俺も真子が好きだから。神条と付き合って忘れようとしたけど……そんなの無理だ」

「ハルト……」

「友達になんてなれねぇよ」

ハルトと至近距離で目があった。

茶色くて澄んだ瞳があたしをとらえて離さない。

どちらからともなく唇を寄せあう。

そして、目をつぶり唇を重ねた。

お互いの気持ちを伝えあった後のそれはごく自然の成り行きだった。

友達としての超えてはいけない一線をあたしたちはあっという間に超えてしまった。

ダメだと思えば思うほど気持ちが盛り上がった。

「……ハルト……」

ギュッとハルトの首筋に腕を回す。それにこたえるようにハルトはあたしの腰に腕を回す。

目をつぶると、セイラの顔がまぶたによみがえった。

ごめんね、セイラ。ハルトはあたしのものになったの。

セイラにはもう渡さないから。

セイラはあたしが持っていないたくさんのものを持っている。

だからいいよね?ひとつぐらいあたしにくれたって。

ダメなんて言わせないから。そんなの欲張りすぎだもん。

罪悪感なんてこれっぽっちも沸いてこなかった。

あたし達は何度も唇を重ね合い、お互いの気持ちを確かめ合った。