「ハァ……、ダメだなぁ。何度練習してもハルト……って名前で呼べないよ」

休み時間、食堂でお昼を食べながらセイラは苦笑いを浮かべた。

「ハルトって呼んでって言われたの?」

「ううん、言われてないよ。でもさ、彼氏彼女になったっていうことは下の名前で呼ばないとかなって。いつまでも清水君と神条さんっていうのもどうなんだろう。真子はどう思う?」

「別にいいんじゃない?無理に名前で呼び合ったりしなくて」

口に含んでいるサンドウィッチの味が全くしない。

まるで砂でもかじっているみたい。

「そうかなぁ?でも、真子はハルトって呼んでるよね?」

「……もしかして嫌だった?」

「ううん!違うよ!そんなわけないもん!男の子のことを気軽に下の名前で呼べるのがすごいなって思って。それに真子と清水君は仲の良い友達でしょ?二人が名前で呼び合ってるのを見ると私嬉しいもん」

あたしとハルトが仲の良い友達……?

グッと拳を握り締める。

「どうしてセイラが嬉しいの?」

「だって、大好きな親友と彼氏が仲良しなんてすごく幸せなことじゃない?」

やっぱりいくらサンドウィッチを噛んでもまったく美味しくない。

食べるのを中断してセイラの顔をじっと見つめる。