でも本当にそうだったの……?

本当にセイラは……みんなが噂するような子じゃなかった?

自分自身に問いかけてみても返事はかえってこない。

今はセイラのことを考えるだけでいらだってしまう。

やめよう。もうセイラのことを考えるのは。

セイラの粗ばかり探そうとしてしまっていた自分に心底幻滅する。


「……ハァ……」

怒りとは一転、今度は体中の力が抜ける。

フローリングの床にヘナヘナと座りこんだとき、ポケットの中のスマホが震えた。

確認してみるとセイラからメッセージが届いていた。

『セイラ:清水君と明日映画を観に行くことになったの。私一人だと心細くて……。だから、真子も一緒に行ってくれない?』

「は?」

低い声が漏れた。

なにそれ。なんなのよ。どうしてよ。どうしてそんなお願いをしてくるのよ。

既読スルーすることに決めてスマホを放り出す。

何が楽しくてセイラとハルトのデートにあたしがついていかなくちゃいけないの?

ギュッと拳を握り締めて、投げ出している太ももに叩き付ける。

「どうして!どうして!どうして!どうして!!」

みるみるうちに太ももが赤く腫れあがっていく。

自然と涙が溢れる。痛い。痛くて仕方がない。でも、痛いのは体じゃない。心が痛くてたまらない。

あたし、どんどん嫌な奴になってる。

大切な親友であるセイラのことを疑って悪く思う自分が本当に嫌になる。

悔しさ、悲しさ、怒り、呆れ。様々な感情が複雑に絡み合う。

「どうしてなのよ……!」

やり場のない怒りは涙となって溢れる。

あたしがこのまま我慢すればいいの……?

そうすればまた元の生活に戻れる?

結局、最後までその答えがでることはなかった。