「セイラに彼氏がいないかどうか聞いてどうするの?いたら告白しないつもり?」

「……は?」

ケンカ腰のあたしの態度に男の子が眉をしかめる。

「みんなセイラに彼氏がいるかとかどんな男がタイプかとか聞いてくるんだよね。直接聞けばいいのに。
高嶺の花過ぎて自分じゃきけないんだよね。みんな弱虫なんだよ」

八つ当たりだって分かってる。

でも、止められない。

「お前……さっきからなんでそんなに偉そうなの?」

「別に偉そうになんてしてないよ。ただ、何人にも同じ質問されて答えるのがめんどくさいだけ」

それだけ言って彼の前から去ろうとしたけれど、あたしは彼の怒りに火を注いでしまったようだ。

「待てよ!さっきから聞いてたら好き勝手言いやがって!お前みたいなブスが神条さんと友達っていうのがありえないんだよ!!」

「……!」

「でも、逆に可哀想だよな、お前。いつも神条さんの引き立て役でさ。どこへ行っても神条さんばかり注目されてお前は蚊帳の外。むなしい奴」

彼はフンっとあたしを鼻で笑うとあたしの肩に自分の肩を思いっきりぶつけて去っていく。

「いたっ……!」

なにあれ。超嫌な奴!アンタみたいに最低な奴にセイラがなびくわけないじゃん!!


「ふざけんな……。どうしてアンタにそんなこと言われなくちゃいけないのよ……」

小さく呟いた自分の声が鼓膜を震わせる。

頬がじんわりと温かくなる。

そこで気付いた。あたし、泣いてる。あいつの最低な言葉に泣かされてる。

最低最悪で嫌な奴。でも、あいつの言葉は全て当たっていた。

中学の時も今も、あたしはセイラの引き立て役で影の存在。

セイラが太陽ならあたしは月。

それでよかった。よかったはずなのに。

たまにこういう気持ちになるときがある。

セイラと自分を比べて、自分自身の価値のなさに落ち込む。

昨日、先輩たちに言われた嫌味もいまだに心の中で引きづってる。

涙が溢れて止まらない。

あたしはそのまましゃがみ込み、膝を抱えて涙を流した。