「セイラはね、とにかく完璧なの」

「つーか、なんで神条の話を真子が得意げに話すんだよ」

「だってセイラはあたしの親友だもん。親友のこと自慢したっていいでしょ?」

呆れたように言うハルトに胸を張って答える。

セイラとは中学時代からの親友だ。

中2の時、同じクラスになり偶然にも席が近かった。

――あたし、池田真子!よろしくね。

声をかけるとセイラは大きな目であたしを見つめた。

小動物のようなその瞳はどこか不安げに揺れている。

――神条セイラです。よろしくね。

流れるように鼓膜を震わせたセイラの美しい声はいまだに耳の奥に残っている。

その日からあたしとセイラは一緒に行動するようになった。

だけど、あの当時、セイラはどこかクラスで浮いた存在で。

イジメまではいかないけれど、それと同等の嫌がらせを受けていた。

中1の時、セイラと同じクラスだったという子には何度もこう忠告された。

『あの子と仲良くしないほうがいいよ。あの子のことみんなヤバいって言ってるし』って。

『みんな』とか『ヤバいって言ってる』っていう出所のわからない信用のおけない言葉。

何の根拠もない悪意のあるその言葉にいきどおりを感じた。

嫉妬、ねたみ、ヒガミ。

男子にモテるセイラは一部の女子から一方的な反感を買い、攻撃を受けた。

その醜い行為に嫌悪すると同時に、あたしが何としてでもセイラを守りたいという衝動に駆られた。

高校に入った今も、その気持ちはブレることなく続いている。