「おい、真子!セイラちゃんはどうしたんだ!」

「帰ったよ?今、あたし達ちょっとケンカしてるの。だからほおっておいて」

「だからってお友達にあんな態度を取っちゃだめよ!」

母があたしの体を押しのけるようにして玄関の扉を開ける。

そこにセイラの姿はなかった。

「もう帰っちゃったのね……。プリン食べて行ってもらいたかったのに」

母が残念そうに肩を落とす。

「セイラがお母さんの作ったプリンなんて食べておいしいなんて思うはずないじゃん」

あたしは母の横を通り過ぎながらポツリと呟いた。

お父さんもお母さんもバカだ。

表面上はニコニコしているセイラだってボロアパートに住んでいるあたし達一家を見下しているのに。

それに気付かないなんて。

「もうセイラなんてあたしの親友じゃない」

そう呟いた瞬間、自分の心の中でようやく踏ん切りがついた。