そのとき、チャイムの音が響き渡った。

「お母さんかな」

保育園から弟たちを迎えて帰ってきたのかもしれない。

「――お母さん、おかえり……」

確認もせずに玄関扉を開けると、そこにいたのは母と弟たちだけではなかった。

「なんで……?なにしにきたのよ!」

弟たちと手を繋いでいるセイラをキッと睨む。

「真子……あのっ……」

セイラが困ったように何かを言おうとしたとき、母がそれを遮った。

「ちょっと、真子!お友達にそんな言い方ないでしょ!?セイラちゃん、せっかくきてくれたんだし、狭くて汚い家だけど少し上げて行って!ねっ?」

「そうだよ~!セイラちゃん一緒に遊ぼう!」

あたしの気持ちなんてこれっぽっちも知らない母や弟たち。

「すみません……。じゃあ、少しだけ……」

押しに弱いセイラは申し訳なさそうに頭を下げながらうちに入った。

「あのっ、このパン……よかったらみなさんで食べてください」

セイラはそう言うと、手に持っていた紙袋を差し出した。