「仕事……まだ見つからないの?」

必死に求人票とにらめっこしている父に声をかける。

「あぁ。なかなか……なぁ。父さんも年だからなぁ……」

「これ、今日受けてきた会社の?」

テーブルの上には返却された履歴書と封筒の山。

「どれもダメだったけどな」

父がため息交じりに肩を落とす。

そのとき、父が見ていた求人票に目が留まった。

「これって……」

「あぁ……これは神条コーポレーションの……。ほら、真子とお友達のえっと……セイラちゃんだったかな。あの子のお父さんが代表を務めている会社――」

「――セイラのお父さんの会社を受けるつもりなの!?」

どうしてそんな会社を……!


「もし採用されたら正社員として登用してもらえる。あそこは福利厚生もしっかしていているし、子供達を育てていく上では申し分ない」

「や、やめてよ……。もっと違うところあるでしょ……?どうしてセイラの……」

さっきまでの爽快な気分はがらりとかわり最悪な気分。

どうしてよ。どうしてセイラのお父さんの会社なのよ。

セイラのお父さんが社長で、うちのお父さんがセイラのお父さんに雇われる。


それが悪いとは言わない。でも、両親の格の違いを見せつけられたみたいでいや。

そんな罰ゲームみたいなことってある?学校の子に知られたらあたしの立場って?

ダメ。そんなの絶対にダメ。

それに……セイラにだけは知られたくない。

あたしの一番の弱点をセイラにだけは見せたくなどない。