学校にいる間、セイラが何度となくタイミングを見計らって声をかけてこようとしていたのを知っている。

それをうまくかわして蘭やハルトの席に向かい、機会をうかがうセイラをうまくまいた。

気分が高揚する。

セイラが悲しい顔をすればするほどあたしの気持ちは晴れる。

辛そうな顔をすればするほど優越感を感じて満たされた気持ちになる。

自分の中に眠っていた自己顕示欲と承認欲求がこれでもかというほどに溢れ出す。

今までのあたしはセイラの影のような存在だった。

誰からも認められず、セイラの引き立て役だったけど今は違う。

金持ちで顔だけが良いセイラよりもあたしのほうがずっと優れている。

ハルトっていう彼氏だっているし、セイラとは違って友達もいる。

蘭はあたしにとってかけがえのない存在だ。

価値観も似ているし、毎回タクシーを使うような金銭感覚のマヒしているセイラとは大違い。

どうして気付かなかったんだろう。セイラに友達ができないのはセイラに原因があったんだ。

引っ込み思案で口下手だから友達ができなかったわけではない。

「もっと早くこうすればよかった」

あたしはポツリと呟くと、軽やかな足取りで家路を急いだ。