21時の秘め事

「ごめ、止まらなくて」


「いつき、なんで?」



〝なんとなく〟なんて言われるのが怖い。
でも、唇から伝わってくる感情があった。



「なんとなく」



聞きたくない言葉があたしの耳にふれる。



「なんと、なく」



自分でも繰り返してみるけどなんとも残酷な言葉だ。



「なわけ、ねーだろ」



ぐいっとあたしを自分に引き寄せる。



「え?」


「なんとなくでお前にキスするほどバカじゃねぇよ」



少し垣間見えた彼の表情はどこか赤くなっているような気がした。



「なんで?」


「わかんねぇの?俺誰にでもキスするわけじゃないけど?」



誰にでもしなくてあたしにはする。



「へ?」



あたしのこと?って考えるけど、でもそんなわけないんだ。
あたしなんか恋愛対象外なんだ。



「ヒント出してたの全部瑠璃のことだよ」


「うそ…」


「ほんと」



ベッドに横たわるあたしの頭を優しく撫でる。