私達は、その瞬間を一生忘れることはできないだろう。


午後の古典の授業。


お昼のあとというのと、教室の暖房が効いていたので、私は今にも眠りそうになっていた。

突然、びゅうっと冷たい風が教室に吹き込み、私はハッとした。


真冬だというのに、一番窓際の席の子が窓を開けたのだ。


その子の後ろの席だった私は、目を点にしながら彼女の背中を見ていた。


「アリスはだあれ?

アリスはだあれ?」


その子は奇妙なリズムで歌いながら、窓から身を乗り出し、真っ逆さまに落ちていった。

その瞬間を目撃した私達は、夢かと思った。