「……もういいよ、僕がそっちに行くから」
「なに、どうしたの?」
「な、何でもないっ……」
「僕にドキドキしてるんだ?」
「なっ、なっ……」
少しからかえば、顔を真っ赤にして、目を潤ませながら僕を見つめてくる。
「ふーん、図星ね。可愛いじゃん、須藤さん」
「……っ」
いつもの僕には考えられないくらい、言葉がポンポンと浮かんでくる。
須藤さんと中庭で初めて会ってから、僕はおかしい。
普段は絶対しないような連絡先も教えちゃうし、変な契約は結ばせてしまうし、席替えでは密かに席を交換してもらったり、前後なことをいいことにちょっかいを掛けたり……
もっと須藤さんと一緒にいたい。
そんな気持ちが大きくなっていた。
それなのにも関わらず、唯一二人きりで過ごしていた放課後は、最近は梅雨のせいで雨続き。
「なにイラついてんの?」
「そう見える?」
「とっても。茉莉ちゃんと宮野も言ってたよ」
「あっ、そ」
なんだかモヤモヤする。



