入学式の日がいい例だ。
あの日は、帰ろうにも帰れず、家に帰ってこれたのはホームルームが終わってから3時間後のことだった。
それはどうしても避けたくて、囲まれる前に逃げるこのスタイルは、すっかり定着してしまっている。
後から大和に聞いた話だと、毎日毎日ファンの女の子たちは、僕のことを探し回っているらしい。
想像するだけで寒気がする。
数人の取り巻きを振り切って、中庭に着くとすぐにカバンを下ろして寝転がる。
「今日も綺麗だな」
手を掲げて、空を見る。
するとすぐに、キミはやってきた。
僕が気づいていないと思っているのか、そっと近づいてくる。
「ねぇ、キミ」
「……へっ?」
そう声をかければ、ハッとして口元を両手で押さえる須藤さん。
でも、今更遅いことに気づいたのか、恥ずかしがる。
何故かそれからキミは、僕からの離れた場所に座る。
声をかけても、近くに来る気はないらしい。



