「……う、すどーう、須藤っ!!」
「は、はいっ」
「ぼっとしてるなんて、随分の余裕だなぁ?」
「え、いや……余裕なんかひとつも」
違うんですよ、先生!
呑気に余裕をかましてるわけじゃなくて、どうしたらいいかわからないんですよ!
いつものように、成宮先生から目をつけられ、クラスメイトからの視線も浴びる。
そのせいか、冷や汗が出てきてもう頭の中はパニック状態だ。
「珍しく、真面目だな、須藤」
「え?」
珍しくって、一言余計だけど……
私が焦っていることは何となく伝わったのだろうか。
成宮先生は、少しの間腕組みをして考えると、いい案が浮かんだのか、ポンっと手を叩いた。
成宮先生の考えることだ。
悪い予感しかしない。
「後ろの結城ー、お前満点だろ?追試まで須藤に数学教えてやってくれ」
「……」
「わかりました。よろしくね、須藤さん」
「えぇーっ!?」
反応できたのは、結城くんが返事をしてから。
クラスの女の子からは「いいな〜」なんて呟きも聞こえて、羨ましがる視線が集まる。
「今度は私も赤点取ろうかな」なんて声も聞こえるほどだ。
それを耳にした地獄耳の先生は「次赤点とったら卒業までずっと俺の雑用係な」なんて言うもんだから、それは諦めていた。



