「そうやってね、笑うんだ」
「え?」
「その子はね、僕に色が見えなくなるかもしれないって話したら、それなら色が思い出せるくらい今見ておけばいいんじゃない?って言ったんだよ」
真っ直ぐキミは、私の目を見てそう言って……
それが何となく人事じゃない気がした。
「それからキミは、綺麗なものを見つけては笑うんだ。綺麗なものをたくさん教えてくれた。それからだよ、僕が頻繁に空を見上げるようになったのは」
……覚えてる。
記憶の中の、片隅に。
「ねぇ、結城くんが入院していた病院はどこ?」
「この街のいちばん大きな病院だよ」
「……もしかして」
中学1年生の時、私のお婆ちゃんが体調を崩して入院していた。
お婆ちゃんっ子だった私は、ほぼ毎日のようにお見舞いに行っていて……
そうだ、そこで同じくらいの男の子に会っていた。
「あの時、キミの名前を聞いていなかったからわからなかったけど……ここでキミと会った時、空を見て綺麗だって言ったでしょ?それで気づいたんだ。同じ笑顔で笑うから」
そっか。
あの日出会った男の子は、結城くんだったんだ。
すっかり忘れてた。



