小悪魔なキミに恋しちゃいました。






***



その話は、結城くんが中学生になったばかりの頃のお話。



まだ周りには、桜の花びらが残っていたそう。



そんなある日、結城くんは交通事故に遭ってしまったらしい。



「でも、近くにいた人がすぐに助けを呼んでくれた。すぐに気を失った僕は覚えていないけど」



事故が多発していた交差点。


滅多に起きないだろうと油断していた。



でも、最悪な事態は突然起きて……



事故が起きてすぐに救急車で病院に運ばれた結城くんは、頭を強く打ってしまっていたけれど、他は打撲だけで、命には別状は無かった。



結城くんが目を覚ましてから、いくつか検査を受けたけれど生活に支障が出ることはなく、少し入院した後、無事に退院することが出来た。



でも……



「その時に言われたんだ。僕の脳の神経が少し傷ついてしまっていて、もしかしたら、色が見えなくなるかもしれないってね」



そう言った結城くんの手は、震えていて。



私はその手をそっと、自分の手で包み込んだ。



"大丈夫"



そんな気持ちを込めて。