「あっ……」
もう帰ろうとでも思ったのだろうか。
身体を起こして、立ち上がろうとしていた。
「……結城くん」
勝手に返さないよ。
「なんでキミがここに」
だって、私は、キミに伝えたいことがある。
本当に驚いているようで、目を大きく見開いているのがここからでもよくわかる。
その場に立ち尽くして動けない結城くんの代わりに、私が静かに近づいた。
ずっと立ちっぱなしの結城くんに、私は木の下に腰をかけてから「隣に座ったら?」といつだかの結城くんのように声をかけた。
一瞬立ち去ろうと足が動いていたけれど、思いとどまったのか、結城くんも私の隣に腰掛けた。
どちらも声は発さない。
聞こえるのは遠くから聞こえる生徒の声だけ。
もうすぐ始まる花火の時間。
きっと最大に盛り上がってるんだろう。



