「玲央くん。キミはもう感じていたんだと思うけど、色覚異常が進行してきてしまっているんだ」



色覚異常。



それは生まれ持ってしまった先天性色覚異常と、今まで正常だったのにも関わらず、突然病気やある出来事がきっかけで起きてしまう後天性色覚異常がある。



僕は後者だ。



中学校に進学して間もない頃だった。



"接触事故注意"と書かれた看板が立つ、事故が多い交差点で僕は運悪く、交通事故に遭ってしまった。



頭をコンクリートに打ち付けてしまって、意識を失ってしまった僕。



幸いにも、そばに居合わせた人たちがすぐに救急車を呼んでくれたらしく、手当がスムーズに行えたことで大事には至らなかった。



しかし、意識が戻ってしばらくしてから告げられた真実。



今のところ日常生活には支障はないけれど、僕の脳の神経が少し傷ついてしまったらしい。



そのせいでもしかしたら、色の区別がつかなくなる。



簡単に言えば、目の前に広がるこの世界が、モノクロの世界になってしまうかもしれない。



そう言われたんだ。



退院してからも、こうして1年に1度定期検診を続けてきて、去年までは「まだ大丈夫。もしかしたら、異常なく過ごして行けるかもしれない」そう伝えられてきた。