「……り、茉莉!どこだよ!」
「結城、くん……?」
微かに届いた男の子の声。
この声は、結城くんだ。
今の時間は授業中のはずなのに。
もしかしたら、空耳かもしれない。
だって、結城くんが私を探しに来てくれるなんてありえないもの。
「茉莉、返事しろよ。ったく、何のために携帯持ってんの」
……やっぱり、この声は結城くんだよ。
間違いない。
あんなに隣で聞いてきた結城くんの声。
空耳なんかじゃない。
間違えもしない、結城くんの声。
「結城くん!いるの?結城くんっ!!」
「……茉莉っ!?」
私を呼ぶ声がはっきりと聞こえた時、図書室のドアの曇ガラスに1人のシルエットが映る。
「結城くん!」
「キミ、そこにいるんだね?」
あんなに押しても引いてもびくともしなかったドアが、ガチャと音を立てて、鍵が開かれいとも簡単に開く。



