俺はゆっくり志帆のそばに行く。



志帆は放心状態って感じで、目線はずっと下を向いたまま。



「志帆・・・・・・?」



大丈夫か?なんて、大丈夫じゃないんだからそんな言葉をかけるべきじゃないと思った。



すると志帆はただ俺の方をじっと見た。




そして、だんだんとその目に涙が浮かんでくる。



俺はベッドに腰掛けて志帆のことをぎゅっと抱きしめた。



声をかけるより、断然こっちの方がいいのかもしれない。



志帆は俺の肩に頭を置いて、嗚咽混じりに泣き出した。



俺はそっと志帆の頭を撫でる。



「・・・・・・・入院なんて、びっくりした。今はただっ、・・・・・・驚いてるだけっ。だから、大丈夫。」




そう話す志帆。




「そっか。・・・・・・・・でもさ、治らない病気じゃないからさ、志帆はまだ幸せなんじゃない?」




「え?」




「俺のお父さんさ、2年前に癌で亡くなったんだよ。見つけた時はもう手遅れだった。だからさ、治るってことはたくさんの可能性があるんだから。・・・・そんなに泣くな。」




志帆に自分の家族の話をしたのは初めてかもしれない。



でも、泣いてる志帆を見たらちょっとだけ父さんのことを思い出した。