「やば、また...」





じわりと涙が滲む。





袖で目元を拭いながら、数学科研究室を目指して走る。





別棟に繋がる渡り廊下を通り、角を右に曲がった瞬間だった。





体に強い衝撃が走る。





私はそのまま尻餅をついた。





「いった...」






「悪い!!大丈夫か!?」





大丈夫です、と言って立ち上がって相手を見る。





「あ...」





「染谷...」






私はぱっと目をそらして、依月の横を通り過ぎた。






数学科研究室で先生に課題を出し外に出ると、もう依月は居なかった。