私は一応、連絡先の書かれた紙を受け取って、タクシー代として1万円をテーブルに置き、彼の部屋を出た。 外は曇っていて、今にも雨が降りそうな曇天。私は、連絡先の書かれた紙を、ポケットの中から財布のカード入れに入れ替えた。 濡れないように。そんなことをしている自分を不思議に思った。そして、そんなことをさせたあの佐田という男を不思議に思った。 こういう運命も決して悪くはないのかもしれない。