「うちのサッカー部に、朝霧 尚(あさぎり なお)っていう3年の先輩がいるんだけど……」


女子のヒソヒソ話が聞こえてきて、私は紫ちゃんと顔を見合わせると耳をそばだてる。


「小町先生と朝霧先輩は付き合ってたんだって」


──え、教師と生徒が付き合ってた!?

自分の耳を疑うほど、衝撃的なトピックスに息を呑む。


「禁断の恋かよ、俺も年上余裕でいける!」

「えー生徒と付き合うとか、教師として終わってんじゃん」


意見はさまざまだった。

ロマンチックだと応援する人、教師としてありえないと責める人。

それを聞いて、私は複雑な気持ちになる。

復帰した先生の耳にも、この陰口や冷やかしが届いてしまうのだろう。

毎日、好奇の視線に晒されて教壇に立つのは辛いだろうなと胸が痛んだ。