カーテンの隙間からさしこむ、まぶしいほどの陽光で、私はぱちりと
目を覚ました。
「ふわぁ。なんて、いい夢」
空は気持ちのよい快晴、目覚めも良好、いつになく素敵な朝だった。
にもかかわらず、起きるのが惜しいと思うくらい、幸せすぎる夢を見ていた。
(もう一度眠ったら、続きを見られるかな)
なんて、平日の社会人としては、あるまじきことを考えてしまうほどだ。

二度寝の誘惑を振り切るように、ベッドから滑り落ちようとする。が、右手だけがベッドに
引き止められて動かない。
「ん?」
見れば、私の右手には別の、ひと回り大きな手が重なっている。その手のすぐそばには、
ぐっすりと眠りこんでいる光一さん。
「睫毛、ながいなぁ……じゃなくて、昨夜のあれは夢じゃない!?」
朝っぱらから、自分でも驚くほど大きな声をあげてしまった。
「ん……」
長い睫毛が震え、光一さんがかすかに目を開けた。そのまま身動きもせず、
ぼんやりと天井を見つめている。
どうやら寝起きはよくないらしい。(いつも光一さんのほうが早起きなので、
知らなかったわ)

ちょうどそのとき、枕元にあった光一さんのスマホが電子音を発した。
彼はのんびりした調子でスマホを持ち上げると、画面に視線をうつす。
その様子から察するに、電話ではなくアラームかなにかだろう。

「いつも鳴る前に起きるのにな」
光一さんは片手でスマホを操作してアラーム音を止めた。
「寝坊しちゃった?大丈夫?」
「いや、いつも無駄に早く目が覚めるだけ」
光一さんの性格から考えても、アラームは余裕をもった時間設定にしているのだろう。
彼はとくに焦る様子でもなかった。