眩しいほどの朝日がさしこむリビングで、私が眠い目をこすりながら珈琲を飲んでいると、パジャマ姿の光一さんが現れた。

「はよ」
いつも朝からシャキっとしている彼にしては、めずらしく気怠げな様子だ。そもそも私より遅くまで寝ていることなんて、ほとんどないのだ。
「おはよう。今日はゆっくりなんだね。朝ごはん、どうする?」
「あぁ、取引先に直行だから。トースト焼いてもらっていい?」
「わかった」
私は二人分のトーストをトースターにセットする。その横で光一さんは自分の分の珈琲を用意する。
「昨日、悪かったな」
光一さんがポツリと言った。

「ううん、大丈夫。歩き疲れたせいか、帰ってきたらすぐ寝ちゃったよ」
とっさに出た嘘を、曖昧な笑みで隠す。

『昨日、遅かったみたいだね。仕事?』
そうさらっと聞いてみればいいだけなのに。夫婦なんだから、なにもおかしくないのに。
蓋を開けてみれば、本当に大したことじゃないのかもしれない。光一さんだって、案外あっさり答えてくれるかもしれない。

だけど、私の口からはうまく言葉が出てこなかった。

本音で向き合う。そう決めたはずなのに、現実にはなかなかうまくいかない。
光一さんに気づかれないよう、私は小さくため息をつく。