■相馬side□



彼女を生かすには、自分の力を与えれば良い。


前世で持っていた力は、寸分なく、俺らは持って、生まれてきた。


例えば、薫は炎で、千歳は時。


そして、俺は……生命。


封力石は、守護聖のからだの中にあった。


それを取り出すのが、巫女の最初の仕事で。


巫女は死ぬまで守護聖に仕え、守護聖のために命を捨てるみたいな固定観念が根付いていた。


けど、それは違う。


十三人いるなかでの最初の巫女、俺に仕えた夕蘭は自身の身を犠牲にしてまで、消えた。


俺に裏切りの言葉を言って。


それは確かに俺を傷つけた。


けれど、それが彼女の望みで。


彼女が命を懸けてまで、止めてくれなければ、大燕鳳帝国を巻き込んだ、世界戦争に発展していただろう。


俺ら守護聖を崇め、膝を折る民達は、大燕鳳帝国を作った初代皇帝のことも祟拝していた。


初代皇帝のことで記憶にあるとすれば、おおらかで面倒くさがり屋の男である。


月姫の加護を最初に受け、人外の力で国を守り抜いた彼の子孫は、守護聖の力を信じ、頼っていた。


だからこそ、それを奪うような輩は徹底的に潰す。


……そんな、人間たちだったから。


当時、世界一の領土の大きさを誇っていた大燕鳳帝国と近隣諸国が合わさった大軍がぶつかった日には……被害が計り知れない。


月姫や沙羅が自分の命と引き換えにしてまで、守った平和が崩される。


そんなときに、夕蘭は俺の前から消えた。