背を丸めて経済新聞を読んでいる沢木の姿が脳裏をよぎる。
窓際の集まり、と陰口をたたかれている新規事業開発部。
そんなところへなぜ白石諒は、そして自分は———
俺がこの部署を選んだ理由は、郁の考えを読んだように白石が言葉をつづける。
「自由度の高さ。レールは敷かれてないから、開拓していかないといけないけど。
自分の力で成功するのが俺に課せられた命題だから」
この人とは、住んでいる世界も、目指すレベルも違いすぎる。
「・・・どうしてわたしはこの部署へ異動になったんでしょうか?」
「俺が、きみを欲しかったから。そこに関しては、裏コネクションを使いましたよ」
悪びれず言う。
「・・・わたしには、なにもスキルがありません」
なんでそこで、“御曹司” としての立場を利用するような真似を。白石のアシスタントならば、もっとふさわしい女性がいるはずだ。
「川本さんには才能がある」
運ばれてきたコーヒーをすすりながら、白石が言う。
「なんの才能ですか?」
思わず首をひねる。
「俺みたいな男に愛される才能」
・・・はぁ?
窓際の集まり、と陰口をたたかれている新規事業開発部。
そんなところへなぜ白石諒は、そして自分は———
俺がこの部署を選んだ理由は、郁の考えを読んだように白石が言葉をつづける。
「自由度の高さ。レールは敷かれてないから、開拓していかないといけないけど。
自分の力で成功するのが俺に課せられた命題だから」
この人とは、住んでいる世界も、目指すレベルも違いすぎる。
「・・・どうしてわたしはこの部署へ異動になったんでしょうか?」
「俺が、きみを欲しかったから。そこに関しては、裏コネクションを使いましたよ」
悪びれず言う。
「・・・わたしには、なにもスキルがありません」
なんでそこで、“御曹司” としての立場を利用するような真似を。白石のアシスタントならば、もっとふさわしい女性がいるはずだ。
「川本さんには才能がある」
運ばれてきたコーヒーをすすりながら、白石が言う。
「なんの才能ですか?」
思わず首をひねる。
「俺みたいな男に愛される才能」
・・・はぁ?



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)