暗くなった感情を取り払うように明るい声を出すものの気持ちは晴れない。
「準備しなきゃ…。」
部屋から出て、リビングに向かう。
机の上においてあるものにちらりと視線を向けた後、すぐに洗面所に向かう。
机の上にあるもの。
『仕事で一か月ほど帰れません。』
そう書かれた置き手紙と一万円札十枚。
幼くして父を亡くした私の唯一の家族の母は、大手ファッションメーカーの社長を務めている。
そのため、仕事で海外へ行くことも多々あり、ほとんど一人暮らししているようなものだ。
ついこの間までも、グアムに二か月行っていた。