春色のletter

「夜梨子ちゃんの今の気持ちはね、きっとノスタルジー。恋していた昔を懐かしんでいるの」


私は天井を向いたままのさつきさんを見つめていた。


「それも、『恋していたあの頃の自分』を懐かしんでいるだけ」


「あの頃の自分?」


さつきさんがこっちを向いた。


「そう。ハルを懐かしんでいるんじゃないの」


「これは恋じゃないんですか?」


「うん。恋じゃない」


彼女の口調はハッキリとしていた。


「だから、ハルがいなくなったことを、あなたが悲しむ必要はないの」


「さつきさん…」


「そう。オンナは強いのよ。ノスタルジーの中にオトコは必要ないの」


さつきさんはそう言って笑った。




「…ありがとう」


彼女は笑い顔を微笑みに変えた。