春色のletter

「ですから、社長がお待ちです」


実久さんが苦笑していた。


「会ってもらえるの?」


「ええ」


「うそ…」


「夕べ、例の資料を父に見せましたから」


「ありがとう…」


私は実久さんの手を両手で握ってぶんぶんとした。


「では、そちらのエレベーターで6階にどうぞ」


私のぶんぶんが終わるまで笑顔で待っていた実久さんが、立って示した。


「はい」


私は促されるまま、ぼーっとエレベーターに向かった。


でも、エレベーターが降りてくる間、実久さんが上に連絡しているのを聞いて、気持ちを引き締めた。


(本番はこれからだ)