春色のletter

彼女はすっと立って両手で受け取った。


お互いその書類を持ったまま顔を見合わせた。


そしてほんの一瞬時間を止めると、二人で笑顔を零した。


「週末はありがとう」


そこからは私的な会話だった。


「いえ、こちらこそ楽しかったです」


「本田さんによろしく伝えてね」


「ええ」


実久さんは書類を見つめた。


「できたんですか?」


「うん」


「自信は?」


「もちろん。諏訪山ワインの100年後もこれが使われていると思う」


「そこまで言います?」


実久さんが吹きだした。


「そこまで言えないと、失礼でしょ?」


「…ですね」


「じゃあ、お願いします」


「はい」


私は諏訪山ワイン本社を出ると、振り返ってそのビルを見上げた。


今は6階建てのビルだけど、10年後にはきっとその倍の高さのビルに移っていることを想像した。