春色のletter

セクションルームの戸締まりをすると、二人で会社を出た。


外はまだ日中の暑さが抜けてなかった。


今夜も熱帯夜のようだ。


「なあ、夜梨」


「はい?」


佐伯さんが遠慮がちに声をかけてきた。


(最近の私、怖いのか?)


少し笑いかけた。


「最初の失敗を気にしているのか?」


それに気づかずに彼はそう言った。


「いえ」


彼は少しきょとんとした表情で私を見た。


「今は、この仕事を成功させたい、諏訪山ワインの人たちに応えたい…ただそれだけです」


私のはっきりした口調に、佐伯さんはホッとしたようだった。


「そっか」


「はい」


「勝沼に行って良かったか…」


「ええ」


後は二人で少し歩調を緩めて、駅に向かった。