春色のletter

「いらっしゃい」


本田さんの奥さんが出迎えてくれた。


ふくよかな体格とその表情が温厚さを表していた。


通された和室の居間はかなり広く、すぐ横が縁側で、戸は開け放たれていて開放感があった。


縁側の蚊取り線香も懐かしい香りを漂わせていた。


この辺りは盆地で、まだ残っている西の方の夕焼けがその手前の山を陰にしていた。


カナカナカナ…と、ヒグラシの鳴き声が時間の流れをゆっくりと感じさせた。

小さい頃、こんな気持ちの中にいたな…

そう思った。

焦ることなく、夕方を、母がご飯を用意するまで。

その時間は今より長かった。


少しその雰囲気に飲まれていたが、テーブルにすごい量の料理が運ばれてくるのに気が付いた。