春色のletter

「今でも、あの時の映像が頭を離れない」


彼の視線が遠くなった。


「俺は、今まで頼子が飛び出した理由を誰にも言ったことがない。親にも…沙也にでさえ…。言ってないんだ。俺が頼子を殺したって…」


「違う…それは、違いますよ…」


「お、俺は、…俺は…」


そこで佐伯さんが手摺りに寄りかかりながら、ゆっくり崩れ落ちた。


「佐伯さん…」


「お、俺は…」


佐伯さんは、嗚咽を漏らしながら、背中を震わせていた。


私は、その背中にそっと手を乗せているしかなかった。