春色のletter

彼は屋上へ足を向けた。


目の前には夜景が広がっていた。

気がつけば、もう夜中といっていい時間だった。

それでも風は、夏の夜風だった。


しばらく二人で高い手摺りに寄りかかって、少し揺らめく夜景を眺めていた。


「なあ、夜梨」


「はい?」


「おまえに謝っておきたいことがあるんだ」


「何、ですか?」


私は佐伯さんの方を見たけど、彼は前を向いたままだった。


「俺な、妹がいたんだ」


(…その話か)


「俺、その面影を勝手におまえに重ねていたんだ」


「知ってましたよ」


佐伯さんは少し驚いたようにこっちを見たが、ふっと笑った。


「そっか、沙也か」


「ええ」


佐伯さんは少し頭をかいた。