「名前だって覚えてもらってないんだよ?私」
「そんなことねぇだろ?だって若松、去年学年のミスだし…」
この学校で多分、若松を知らない奴らはいない。いい意味でも、きっと悪い意味でも。
「有馬くん、私のことミスちゃんって呼んだの。有馬くんにとって私は学年のミスっていう認識しかない。彼の中に若松咲菜はいないの」
「それでもいいじゃん。今からでも…」
「だから…早く河西さんにどいてもらってよ」
若松はユズが邪魔で
俺は有馬が邪魔。
それなのに、若松のセリフに『わかりました』なんて、すぐに答えられないのは、
今のユズとの心地い関係が壊れたら、なんて考えたら恐ろしいから。



