キミが可愛いわけがない



「大きなお世話?別にそんなつもりないよ」


「じゃあ、どういうつも─────」


っ?!

振り返って、彼女の足元に懐中電灯を照らして、彼女の顔を見る。


足元を照らされた彼女は、涙目でこちらを向いていた。


俺はいつだって、自分のことばっかりだ。


彼女がどうして俺とユズにこだわるのか、そんなことわかってたのに、自分の気持ちをコントロールするのに必死で忘れかけていた。


「ごめん」


初めて話しかけた時、彼女は言っていた。


『私と楠木くんって、似てるのかもね』


そう、俺と若松は『片想い同士』。

似ているんだ。



「楠木くんはいいじゃん。すごく近い。近くても遠いなんてそれらしいこと言う人がいるけど、物理的に遠くて心も遠いひとより数倍マシだよね」


「……」


俺は、ユズに存在を認識してもらえてる。
お互いの家を行き来できて、お互いの好物も嫌いな食べ物も知っている。


そんな俺に比べて、若松と有馬の距離って…。