キミが可愛いわけがない



「イチャイチャしてたんだ」


クラスメイトがいるテラスに戻って、みんなの輪から少し離れてお皿に運ばれていく肉を眺めていると、隣から女の声がした。


「そういうんじゃねぇ」


「そうなの?余裕だね。私なら隙あれば必死にイチャイチャしちゃう」


一見ふわふわした雰囲気なくせに、結構鋭いところを突いてくる彼女は、正直苦手だ。


「なんだそれ」


俺たちは、周りにしゃべってるとバレない程度の距離で話をする。


「ねぇー!若松さーん!俺にあーんして!」
「え、じゃあ俺やってもらいたーい!」


「え〜。恥ずかしいから無理だよー」


そう言って、男子たちを慣れたように遇らう彼女を、他の女子たちはいつものようによく思っていない目で見ている。



ユズは、女子のこの目が怖くて、俺にも近づかないんだよな。