キミが可愛いわけがない



ユズと話せて、ユズの顔が見れて。


単純だけど、俺は今すごく機嫌が直ってる。


「ユズ、一応言っとくけど自販機で飲み物買うの禁止だよ?」


「知ってる」


「うわー、ヤンキーじゃん」


「芽郁の方がヤンキーでしょ?いつも顔怖いし」


自販機の隣にあるベンチに座って話す。



心の中にあった尖ったものが、ユズと話すたびにどんどん溶けていく。



「全然。学年で成績1位がヤンキーってどういうことだよ」


「うわ〜うざ〜!!」


ユズがそう言って、俺の肩を軽く叩く。


本当はさ…。

ユズがここに来るって──────。


「芽郁がここに来るって思ったから」


っ?!


「だから、ダメだってわかってたけどきたの」


そう言って、照れ隠しのようにくしゃっと笑うユズに、


途端に胸を鳴らしてしまう。


ああ。ずりぃ。


「俺も」


今、ユズの顔は見られない。


俺の気持ちはユズが俺を思う気持ちよりも特別だから。


今の顔を見せてそう言えば、絶対にバレてしまうから。


俺はうるさい心臓の音をごまかすために、
しゅわしゅわっと音をならせるコーラを一気に飲んだ。