キミが可愛いわけがない










「わー!見てー!芽郁くんだ!」

「きゃっ!こっちの教室に来るよ!」

「芽郁くんーー!わー!こっち見た!」




お昼休み、廊下が騒がしく嫌な予感がする。



「ユズ、300円ちょうだい」


うーわ。
芽郁が手を出して、すごく不機嫌顔でこちらを向いて立っている。



「ちょうだいって、あんたね…」


「早く」


後ろから聞こえる芽郁くんコールにイラついてる芽郁はどんどん眉間にしわを寄せる。


あぁ。
みんなの前では極力話しかけないでって言ってるのに。


「あげないから。ちゃんと返してよ?」


「やだ」


「はぁー?!」


芽郁はさっさとこの場から消えようと、私が渋々出した300円を受け取ってから、さっさと振り返って廊下に向かって歩いていってしまった。



あぁ、もう…。

人からお金借りて返さないってあるかね。


芽郁がいなくなっても、女の子たちのキャーキャーという声と時々浴びせられる私への強い視線は消えない。