「今、有馬くんは完全に河西さんのとこ向いてるもん。楠木くんだってぼーっとしてられないんじゃない?」
「……は?」
「河西さんだって、結構楽しそうだよ」
若松がそう言いながら窓の外を見るように促すので、俺はユズの方を見る。
っ?!
なんでだよ…。
気付けば、ユズの友達はいなくなっていて、ベンチにはユズと有馬が2人で座っていた。
なんだよ…あれ。
有馬はユズの弁当のおかずを勝手に食べたらしく、ユズがポカポカと有馬の頭を叩いている。
『有馬は良くて俺はダメなのか』
何度もそんな言葉が頭を駆け巡る。
「あほらし」
俺はそう言って、窓から離れる。
「私と楠木くんって、似てるのかもね」
「はぁ?……ぜんっぜん」
俺は彼女にそう言い残すと、背中を向けて廊下を後にした。



