「芽郁…?」
「…好き」
へっ?
私の耳元で呟かれたそれは、空耳かと思った。
「聞こえた?ユズ」
「ん…ん、、多分?」
「一回で分かれよ…」
いちいち一言多いなぁ!
「好き。ユズが好き…。バカみたいに好きだ」
「ちょ、芽郁、言ってることがよく…」
嘘。
わかってる。
芽郁が何を言ってるのかわかってる。
けど、信じられないの方が大きくて。
でも、だんだんだんだん速くなる自分の心臓に、余計実感が湧いてくる。
「なぁ、ユズ、聞こえてる?俺、すげぇお前が好きなんだけど。女として」
「全然わからないです」
思わず敬語になった自分を殴りたい。
「どんだけバカなんだよお前は」
体を離した芽郁は私を見下ろして、呆れたようにそう言った。
さっきの可愛い告白をした子犬な芽郁ちゃんはどこに行ったのさ。



